あすなろ法律事務所
離婚問題


◆離婚手続きの流れ




第1 離婚を決意する

1 結婚前は、「あばたもえくぼ」でしたが、結婚して相手や相手の家族の困った部分が見えてきます。離婚を決意する事由は、夫あるいは妻の不倫、夫の暴力、ギャンブル癖、浪費癖、多重債務、義父あるいは義母との不仲、性的問題、価値観の相違、性格の不一致等様々です。離婚を決意する前に悩みぬかれたと思いますが、決意する前にできれば、自分の親兄弟や親戚あるいは親しい友人などに相談し、自分の決意が間違っていないかどうかアドバイスしてもらうということが重要です。

2 専門的な相談窓口としては次のとおりです。
@家庭裁判所・・・家事相談室で相談する。料金は無料。
A弁護士会の法律相談・・・有料の場合、30分:5000円程度、
B自治体の相談機関・・・婦人相談センターや自治体の無料法律相談、
C(社)家庭問題情報センター・・・全国に9カ所あります。ホームページを参照してください。
D福祉事務所・・・市町村役場等に問い合わせて下さい。料金無料。

3 夫婦関係円満調整の調停の活用
   いきなり、離婚ということではなく、こわれかけた夫婦関係を立て直すために、生活環境やこじれた感情の対立を調整するという非法律的な事項を人生経験豊かな調停員を介して、円満に解決できないかというための調停です。そこで、調停員の意見を聞き、互いに自己を見つめ直し、反省することができれば、また、円満な夫婦関係に戻ることも可能なはずです。
しかし、どうしても、夫婦の溝が埋まらない時は、離婚を決意し、離婚調停に進むということになります。

第2 離婚に際しての検討事項

1 戸 籍・・・婚姻前の氏にするか、現在のままの氏にするか。

2 子 供・・・子供が未成年である場合、どちらが親権者となるか。養育費の取り決め、面接交渉を認めるか等。

3 財産分与・・・@婚姻中に夫婦が協力して得た財産の清算。A算定の考慮要因としては、寄与度(財産形成に対する妻の貢献度)、有責性の有無、離婚後の扶養の必要性、離婚の経緯、その他一切の事情。B請求可能期間は、離婚時から2年(民法768条2項)なので、注意。

4 慰謝料・・・離婚原因をつくった者が支払う。請求可能期間は離婚時から3年(民法724条)。

第3 協議離婚

1 離婚届を提出
夫婦双方の離婚の意思をきちんと確認した上で離婚届を作成し、結婚中の夫婦の本籍地か住所地の市区町村役場の戸籍課に提出をします。本籍地以外の役所で届けをする場合には、戸籍謄本も必要なのであらかじめ本籍地の役所から取り寄せておくことが必要です。


2 一方的に離婚届を届けだされてしまった場合
 一方の意思だけでは、離婚はできません。一旦は、離婚届に署名・押印したが、やはり、離婚したくないと思い、そのことを相手に伝えれば、相手は、それを無視して届出を出しても無効です。しかし、「離婚届」を受け付ける市区町村役場では、夫婦の署名が自署かどうかや、夫婦には離婚の意思があるかどうかは細かくチェックしませんので受理されてしまいます。受理されてしまえば、その時点で離婚が成立してしまいます。もっとも、受理された場合でも離婚する意思がなければ、調停裁判を申し立てることはできますが、事前に告知したか否か立証できなければ裁判で負ける場合もあるので、相手が離婚届を提出する前に「離婚届の不受理申出書」を先回りして役所に提出しておけば、離婚届は受理されません。

3 協議離婚であっても、取り決めたことは書面化しておくこと
 財産分与や養育費などの金銭的なことは、合意書のような形で、書面化しておくことが必要です。できれば、「公正証書」にしておくといいでしょう。公正証書では、「金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する」といった文言を入れることができるので、相手が払わないとき、強制執行によって財産や給与の差押えなどが可能になるからです。

第4 家庭裁判所への調停申立

1 調停の申立
 調停の申立は、相手の住所地の管轄のある家庭裁判所か、もしくは夫婦が合意して決めた家庭裁判所に対して行います。たとえば、名古屋で結婚生活を送っていた夫婦が別居して、妻が、実家のある札幌で生活している場合、夫が離婚の調停を申し立てる場合、妻が生活している札幌の管轄である札幌家庭裁判所に申し立てることになります(逆ならば、名古屋家庭裁判所)。 健康上の理由などやむを得ない理由で、例えば、札幌(あるいは名古屋)に行くことができない場合には、自分の住所地の裁判所で受け付けてもらいたい旨の上申書を提出し、裁判所が認めれば自分の住所地にある家庭裁判所で調停することも可能です。なお、双方の合意で中間地の東京家庭裁判所とすることも可能です。
 調停の申立の費用は、収入印紙が1200円、予納する切手が850円の合計2050円程度です。(予納する切手代は、各裁判所によって異なりますのでお問い合わせ下さい。)

2 調停期日の通達
 申立が受理されると、調停期日が指定され、申立人と相手方の両方に呼出状が郵送されます。相手方が、いやがり、呼出に応じない場合もあり、この場合、裁判所から出頭勧告をしてもらいます。それでも応じなければ5万円以下の過料の制裁を受けるおそれがあります。どうしても、応じなければ、申立人は調停を取下げるかあるいは調停不成立ということになります。なお、本人にかわって代理人を立てることは可能です。通常は、弁護士が代理人になりますが、裁判所が許可すれば、親兄弟も代理人になることができます。

3 調停
 調停は、裁判所の庁舎内の調停室で行います。調停員は、原則40歳以上70歳未満の男女各1名で、信頼のできる豊富な社会的経験の持ち主が調停に当たります。そして、テーブルをはさんで対面で話し合います。申立人、相手方は、控え室が別々になっていて、顔を合わさないようになっています。そして、調停は、両者別々に調停室に呼ばれ、その間、もう一方は、控え室で待機しています。
 調停では、自由に発言することはできますが、調停員に対して、感情的にならず、自分の言うべきことをきちんと冷静に話すべきです。そのために、話す内容を事前にまとめておくと良いでしょう。また、相手が、虚偽や不合理なことを言っていることがわかれば、きっぱりと否定し、かつ、筋道が立つ説明をすべきです。金銭や親権に絡む問題は、その場で即答せず弁護士に相談をしたり、自分でも熟慮の上、慎重に対応することが得策ですので、次回に返答するということでも良いと思います。
 調停が1回で終わることはまずありません。一般的には、1ヶ月に一度のペースで三回程度が目安です。調停時間は、待機時間も含めて約2時間前後です。

4 調停の成立
 調停が成立すると、裁判官、調停員等が立合の下で調停調書が作成されます。そして、この時点で、離婚は成立します(これを調停離婚と言います)。そして、成立の日から10日以内に役所の戸籍係に申立人が離婚届を提出します。この場合、調停調書の謄本を添えて下さい(謄本は、調停が終わった際に裁判所にある交付申請書に必要事項を記入して提出すれば交付してくれます。なお、1通につき150円の収入印紙が必要です)。10日を過ぎると、3万円以下の過料に処せられますので注意して下さい。なお、この場合の届出は、既に成立した離婚を役所に報告する「報告的届出」としての意味合いをもちます。
 また、調停調書で作成された内容(例えば、養育費や財産分与の金額など)は、確定判決と同じ効力があり、調書の内容に従わなければ強制執行することが可能です。

5 調停不成立
 調停を繰り返しても、夫婦間の話し合いではいつまでも合意が見込めないと裁判所が判断した場合は、調停不成立という形で調停が終了します。

第5 審判離婚

 1 離婚したほうが夫婦双方の利益になると認められるときは、家庭裁判所の判断によって、調停が成立しなくても、調停に代わる審判を下し、審判離婚が成立することもあります。この場合、離婚と同時に親権者の指定や、財産分与、慰謝料などの額を命ずることもできます。

 2 審判離婚が認められるケース
@ 離婚に合意しているが、一方が病気などの事情で調停成立時に出頭できないとき。
A 離婚に合意しているが、財産分与の額などで話し合いがつかず調停不成立になったとき。
B 離婚に合意した後、一方が行方をくらましたり、調停への出頭を拒否したとき。
C 子供の親権の問題など、早急に結論を出した方がよいと判断したとき。
D 離婚に合意しない主たる理由が感情的な反発であり、異議申し立ての可能性が事実上ないとき。
E 夫婦二人が審判離婚を求めたとき。

3 異議
 審判の結果に不服があれば、審判告知より2週間以内に異議の申し立てを行えば、審判の効力はなくなります。
申立が無ければ、審判は確定し離婚は成立します。この場合、「審判確定証明書」「審判書謄本」を添えて、戸籍係に離婚届を出して下さい。

第6 裁判離婚

1 協議離婚ができず、家庭裁判所の調停・審判でも離婚が成立しなかった場合には、最終的な手段として「裁判離婚」があります。裁判離婚はいきなりできません。相手が生死不明で調停ができない場合などを除いて、必ず調停が前提です。これを「調停前置」といいます。

2 裁判離婚では、法律で定められた離婚原因がないかぎり、離婚は認められません。この法定離婚事由には、以下の5つがあります。

@ 不貞行為・・・配偶者のある者が、配偶者以外の異性と性的関係をもち、結婚生活を破綻させた場合など。
A 悪意の遺棄・・・夫婦の間にある同居義務・協力義務・扶助義務を尽くさないことが非難に値する場合をいう。愛人のもとに入りびたって帰ってこない。実家に帰ったまま故意に夫婦の義務を怠っている場合など。
B 3年以上生死不明・・・単なる行方不明ではなく、最後に生存を確認できたときから、3年以上にわたり生死不明の状態が続いている場合。
※この場合は、すぐに裁判離婚の請求を起こせます。
C 回復の見込みのない強度の精神病・・・専門医による医学的な裏付けと「離婚を請求する配偶者が、これまで誠実に療養・生活の面倒をみてきた」「病人の将来の療養・生活に対して、具体的な方策や保障がある」「治療が長期間にわたっている」などが判断基準とされます。
D 婚姻を継続しがたい重大な事由のあるとき・・・
@性格の不一致(生活観、人生観、価値観などの相違で、客観的に見て婚姻が破綻し、将来的にも修復の可能性がないと認められる場合など:具体的な例としては、「利己的かつ自己中心的」「思いやりがない」「嫉妬深い」「会社人間で家族をかえりみない」のようなものがあります。)
A暴行・虐待・侮辱・粗暴・短気な性格・酒乱による暴行など(日常的に繰り返される暴力行為によって結婚生活が破綻し、回復の余地もないと認められる場合など)、
B勤労意欲の欠如・ギャンブル・金銭トラブル・浪費など(定職に就かず、生活費を入れない、生活が困窮するほど、ギャンブルに熱中する。多額の借金の繰り返しが原因で、結婚生活の破綻が認められる場合など)
C過度の宗教活動(配偶者の過度の宗教活動によって、家庭生活が崩壊するような事態に陥ってしまっている場合)
D性の不一致(年齢・病気などの理由もなく、性交渉が全く不可能な場合や、長期にわたり性交渉を拒否している場合など)
E配偶者の親族との不和(親族との不和によって夫婦関係が回復できないまでに破綻し、義父母からの虐待や侮辱が客観的に見てひどいと判断される場合)

3 離婚裁判手続き
 平成16年4月以後は、地方裁判所ではなく家庭裁判所に離婚訴訟を提起することになっています。なお、離婚原因を作った責任がある側(有責配偶者)からの離婚請求は原則認められません。但し、@夫婦の別居期間が、同居期間と比較して相当の長期に及んでいること、A夫婦間に未成年の子供がいないこと、B離婚により相手方が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれないこと、の事由がある場合は有責配偶者からの提訴も認められる場合もあります。
 裁判なので、請求の趣旨や請求の原因などを記載した訴状を提出します。その他、請求金額によって異なりますが、印紙代・郵便切手等の手数料などの費用もかかりますので、詳しいことは、裁判所あるいは弁護士に問い合わせて下さい。
  離婚訴訟は、原則、判決がなされますが、判決を待たずに、途中、原告と被告が離婚に合意すれば、「和解」というかたちで終了する場合もあります。判決が確定すれば、判決謄本と判決確定証明書を添付して離婚届を出すことになりますが、和解の場合は、協議離婚という形をとるため、和解成立後には協議離婚と同じ方法で離婚届を役所に提出する必要があります。

第7 当事務所の対応

 当事務所は、これまで数多くの離婚問題に対応してきました。離婚問題で悩まれるご依頼者の気持ちになって、どうしたら、適切な納得のいく解決が可能かをご依頼者と一緒になって考えております。
 弁護士費用などもご依頼者の経済的事情を酌んで、無理のない金額で行っております。是非、一度、気楽なお気持ちでご相談下さい。