あすなろ法律事務所
定期借家契約について


Q.夫の海外赴任で私達家族も同伴することにしました。赴任期間は4年です。そこで、今住んでいる住居を人に貸して、赴任が終わったら、また、住居に戻りたいと思っていますが、一旦、人に貸すと更新されてなかなか返してもらえないのではないとかという不安があります。何かいい方法がないでしょうか。

A.  通常の借家契約では、期間が満了しても、更新が可能であり、更新を拒絶するには貸主側の「正当事由」が必要です(借地借家法28条)。しかし、借家人の保護の関係から、なかなか正当事由が認められず、裁判沙汰や高額な立退料を支払うというケースがよくあります。そこで、こうしたトラブルを防ぐために「定期借家契約」というものがあります(法38条1項)。
 定期借家契約とは、更新のない賃貸借契約のことをいい、期間が満了すれば、借主は出て行かなければならない契約です。このため、貸主にとっては、@賃貸借期間を確定させて、借主とトラブルなく明け渡してもらえる、A賃料増減に関する特約も可能、という特徴があります。
 契約方法ですが、@書面(条文は公正証書による等書面によると書かれていますが、必ずしも公正証書による必要はありません)によって契約し、A賃貸借期間及びB契約の更新がないことを定め、C更新がないことを貸主から借主に対し、契約書とは別の書面(事前説明文書)できちんと説明すれば大丈夫です。なお、原則として、契約の終了時には終了通知をする必要があります。具体的には、借主に対し、期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間満了により契約が終了する旨を通知しなければなりません。この通知を怠った場合は、賃貸借契約の終了を主張できなくなり、借主は建物から出て行かなくてもいいし、また、任意に退去することも自由です。
 定期借家契約の期間ですが、特に期間制限はありません。ですから、1か月、6か月という短期の契約でも可能であり、10年、30年、50年という長期の契約も可能です。
 当初、短期間で貸したが、期間満了時にもっと借りて欲しいという場合ですが、この場合は、更新はされませんが、再契約をすることは自由です。ただし、従前の契約とは異なる新しい契約なので、既述した@などの手続きを再度とる必要があります。
 賃料改定特約が認められることから、契約期間中は賃料を減額しないとの取決めも有効にできることになります。ですから、貸主にとっては、賃貸借契約期間中の賃料収益をより予測しやすくなるというメリットもあり、貸した住居の賃料でローンを支払う場合は、有効な特約となります。