あすなろ法律事務所
相続税とその節税について(その1)

Q.相続税は税金の中でも節税しやすいとききますが、具体的にどのような節税対策がありますか。因みに、私は、夫と長男、長女の4人家族です。


A.
 設問の例で夫が亡くなり、相続人は妻と子供二人という仮定で説明します。
 相続税の申告・納税までには遺産分割を終え、基礎控除内に収まるかどうかを計算します。基礎控除額は3000万円+(600万円×法定相続人の数)ですので、この場合は4800万円となります。相続財産の全てから、夫の借金や葬式費用、香典、墓、祭祀道具、生命保険の控除(法定相続人数×500万円)等を可能な限り差し引いても基礎控除額の範囲で収まる場合、相続税は課税されず申告も不要です。この基礎控除のおかげで、相続税を収めるのは全相続人のうち全国平均で約8・3%です。仮に長女が相続放棄をしても、法定相続人に入ります。養子も法定相続人に入りますが2人が上限です。節税対策をうまく行えば相続税を払わずに済みますので、財産がある方は税理士と相談してみるとよいかと思います。
 なお妻には「配偶者控除」という特典があり、相続財産の2分の1、または1億6000万円のどちらか大きい方の金額まで相続税はかかりません。夫の遺産が総額2億円とした場合、妻1億円、二人の子供は各自5000万円となり、妻の相続税ゼロです(1次相続)が、その後の妻の死亡で、二人の子供に妻の財産(1億6000万円相当と仮定)が相続された場合(2次相続)、子供には、1次相続と2次相続の合計で高額な相続税を払う羽目になる場合もあるので、配偶者控除の特典を利用するかどうかは、税理士と相談すると良いと思います。
 節税対策で最も利用されているのは、暦年贈与(暦年課税制度)で、一人当たり年間(1月1日〜12月31日)110万円までの贈与(子や孫以外の誰にでも、また現金に限らずどんな財産でも)が非課税になります。相続の発生から遡って3年以内の贈与は相続税に含まれるので、早く始めるほど、受け取る人が多いほど節税の効果があります。しかし、この生前贈与は、2022年の税制改正で3年以内の期間を10年あるいは15年以内に延長する可能性があり、実質的に老後に子や孫など贈与することによる節税は不可能になるとも言われています。