改正相続法における遺留分の見直しについて
Q.改正相続法により、遺留分のルールも変わると聞きましたが、どのように変わるのでしょうか。
A.
次の事例を元に説明します
自宅で長男と商売を営んでいた父親が、資産価値6000万円の自宅兼店舗を残して死亡しました。(預貯金はなく母親は既に他界)父親は生前、自宅兼店舗を長男に全て相続させるという遺言書を残していました。
父親には、他に次男がおり、次男は、相続人として最低限の取り分を要求することが出来ます。これを「遺留分減殺請求権」(遺留分侵害額請求権)といいます。次男の法定相続分は、2分の1の3000万円価値相当ですが、遺留分としてその2分の1である1500万円価値相当を請求することが出来ます。この場合、自宅兼店舗において4分の1を相続する権利を持っていることになります。この結果、自宅兼店舗は、長男4分の3、次男4分の1の割合で共有状態となり、長男が自宅兼店舗を自由に賃貸や売却することが難しく、もし、4分の1を買い取ると申し出ても、次男が拒否すれば、それも出来ないことになります。
そこで、今回の改正で、遺留分に関しては、「金銭債権化」することを原則としました。つまり、「共有」ではなく、「金銭で払う」と定められたため、長男が1500万円の自己資金を用意できない場合は、自宅を処分して資金を作らなければならないことになります。そうした事態を防ぐために、父親は、亡くなる前に、死亡の場合の生命保険の受取人を長男にしておくなど、遺留分を支払うための用意をしておくことが必要となります。
また、遺留分を計算するとき、父が亡くなった時点の所有していた財産だけでなく、父親が一生涯において生前に贈与した財産全てが対象となっていました。そのため、長男の何十年も昔の学生時代の費用まで、生前贈与を受けたと次男が主張し、紛争が泥沼化する例がありました。しかし、今回の改正で、遺留分を計算する上での生前贈与の対象期間を10年前までと限定し、この結果、遺留分を巡る紛争は、早期に解決することとなりそうです。