あすなろ法律事務所
改正相続法における特別寄与制度の創設について(その1)

Q.長男の嫁として夫の両親の介護を長年引き受けて、大変な思いをしてきたにもかかわらず、いざ遺産相続になると、相続人は長男と、全く親の面倒をみていない次男と長女のみ。苦労した嫁の私に義理の親の遺産が貰えないのは余りにも不公平です。法改正で、私にも財産を分けてもらえるということですが、その詳細を教えて下さい。


A.
 今回の相続法の改正により、相続人以外の者が被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合に、特別寄与者が各相続人に対して、寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができることとなりました(1050条)。これまでも相続人に限って「寄与」という考えがあり、介護の貢献度合いに応じ寄与分という形で相続額を増やすことができましたが、相続人でない長男の妻は請求することはできず、設問のように実質的な公平を欠くという批判がありました。そこで、「被相続人の相続人でない親族」(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)でも「特別寄与料」の請求ができることとなりました。長男の配偶者である「嫁」(一親等の姻族)は、「相続人ではない親族」となり、介護の貢献分を請求できるようになりました。孫(2親等の血族)はもちろん、いとこの子(5親等の血族)のような遠縁も含まれます。
 具体的に説明すると、義父の遺産額が3000万円として、長男、次男、長女の法定相続分は各自1000万円です(義母は既に死亡)。そして、仮に嫁の特別寄与料を300万円とした場合、長男ら3人から各自100万円の計300万円を請求できることになり、長男らの法定相続分は、100万円ずつ減るということになります。
 また、長男である夫が故人となっていた場合、今までは、残された妻はどれだけ義父母に尽くしても、相続人でないため遺産を受け取ることができませんでしたが、今回の法改正で、夫が存命の場合と同じ水準の特別寄与料を請求することができるようになりました。つまり、次男や長女から150万円ずつ請求できることになります。したがって、夫の死後も献身的に舅や姑の介護を続けた場合、その見返りを受け取ることができ、介護の苦労が報われるということになります。