改正相続法における配偶者居住権の新設において(その1)
Q.改正相続法が成立し、1年以内に施行されることが報道されていますが、その詳細を教えて下さい。
A.
平成30年7月13日に改正相続法が公布され、原則公布日から1年以内に施行される予定です。主な改正点は、次の4項目です。
@相続開始後の配偶者の居住権確保
A遺産分割前の預貯金債権の行使
B自筆証書遺言の方式の緩和
C遺留分減殺請求権の金銭債権化
今回は、@の配偶者の居住権確保について解説します。これは、生存配偶者(多くは妻)の「終の棲家」を権利として確保しようとするものです。かかる生存配偶者は、多くは高齢者であり、長年住み慣れた「我が家」に最期まで住み続けたいという希望が強いのが通例であり、高齢者が新たな地に引っ越して新しい生活を始めるのは肉体的、精神的に大きな負担です。他方、相続人が複数いて、遺言もない場合、それぞれの法定相続分に従って相続財産を承継することになりますが、居住していた建物をまるまる生存配偶者のものにするためには、きちんとした遺産分割をしなければなりません。遺産分割協議の結果、建物や敷地を単独所有できればいいのですが、親子関係等がうまくいかず、他の相続人と共有になると、いつかは出て行かなければならにかもしれないという不安な状況に置かれ、自分の持分を超える部分は使用料(賃料)を払わなければならないなどの問題が生じます。
そこで、改正法は、被相続人の死亡後の配偶者の生活の維持のため、配偶者がそのまま建物に住み続けられることを確保するための新たな制度を設けました。具体的には、被相続人が配偶者に建物に引き続き住んで欲しいという意思を明確にした場合や、相続人が遺産分割で配偶者に居住権を認めた場合に成立する「配偶者居住権」と、被相続人の意思が必ずしも明確でなかったり、遺産分割協議で居住権は認められなかったりしたものの、長年居住してきた事実を尊重して認められる「配偶者短期居住権」があります。
AからCについては、次号に引き続きます。