遺言信託について
Q.新聞記事や雑誌などで「遺言信託」という言葉を目にしますが、どういうことでしょうか。
A.
信託銀行のパンフレットなどにも「遺言信託」というサービスを見かけますが、これは、遺言にかかる一連のサービスを意味します。遺言を書くときに遺言執行者として信託銀行を指定し、相続が生じたときにその信託銀行が、遺言に記載されている通りに財産の分割に関する手続などを行うサービスをいいます。このサービスは「信託」という言葉を使っていますが、信託法でいう「信託」という制度の利用とは異なります。信託法上では、信託とは、信託契約、遺言、公正証書などの方法によって、「特定の者が一定の目的に従い、財産の管理又は処分及びその他の当該目的を達成の為に必要な行為をすべきものとすること」をいいます(信託法2条、3条)。
具体的には、長男の子ども(内孫)のために、自分の預貯金の一部を、孫が大学に入学した際の学費に使いたいと思った場合、あらかじめ信託銀行との間に、ある程度まとまった預金を信託財産とし、自分が亡くなったときは、その預金を孫の学費に充てられるよう管理・処分してもらう信託契約を結んでおけば、信託銀行はその契約に基づいて学費の支払いをしてくれます。このような信託を「遺言代用信託」と言います。遺言と違うのは、生前に信託の効力が発生する点です。この「遺言代用信託」で、自分が亡くなった場合、信託した預金から、葬儀費用を配偶者などに渡すようにと契約(例えば、「私が亡くなったら、妻の口座に葬儀費用として300万円振り込むこと」と指定する)すれば、面倒な相続協議をしなくても(通常、亡くなった人の預貯金は、協議が終了するまで凍結されますが)すぐに指定された配偶者にお金が渡されます。
その他、家族の当面の生活費、あるいは、年金のように定期的に一定額を残された家族に渡すことも可能です。多くの信託銀行は、元本保証のタイプの遺言代用信託を取り扱っており、1000万円までは元本及び利息が保障されます。もっとも、預けた資産の事務・管理のために管理手数料がかかる場合もあるので、詳細は信託銀行に問い合わせてみるといいでしょう。