代償分割について
Q.父親が亡くなり、長男の私は、実家である父親名義の土地・建物を相続して実家を守りたいと弟や妹に言ったところ、
弟らは、「私たちも相続権がある。兄のみ実家の不動産を相続するのは不公平だ。」と言い出しました。どうしたら良いでしょうか。なお、父親の相続財産は、実家の土地・建物以外、
特にありません。
A.
相続財産(遺産)をどう分け合うかは非常に難しい問題ですが、一般的に遺産分割の方法は、3通りあります。まず、
@現物分割です。遺産分割の対象となる相続財産を、
相続人間で分け合うことをいいます。例えば、不動産は全部長男、動産は全て二男、預貯金や現金は長女という分け方です。次に、
A代償分割です。相続人の一部の者が現物取得し、
他の相続人には、その現物を取得した相続人が一定の金銭などを支払う方法です。最後に、
B換価分割です。これは、遺産分割の対象となる相続財産の全部又は一部を売却し、
売却代金を分け合う方法です。
設問のように、不動産しか財産がない場合、不動産は分割しにくい財産であり、例えば、親と同居している長男が「自宅不動産」を相続すると、兄弟姉妹は相続する財産がなくなってしまいます。
そこで、遺産分割協議で、
「長男は、親の土地・建物を相続する。ただし、長男は、二男や長女に対し遺産を取得しない代償として各500万円を支払う」という代償分割を取る方法が良く利用されます。
つまり、代償分割は、相続財産に農地や事業用不動産、同族株式などが含まれる場合、細分化、共有化を避けることができます。とりわけ、
不動産の遺産分割紛争で、代償分割による解決が効果的です。
例えば、設問のように、長男が相続すれば、二男や長女に何も残りません。だからといって、不動産を、長男、二男、長女が共有したところで、長男が自宅に居住し、二男や長女が居住しないのなら、二男らは何もメリットがありません。また、共有状態で長男や次男らが亡くなると、それぞれの子や配偶者が相続して共有者となり、権利関係が複雑になります。こうした共有相続を回避するためにも、代償分割は有効です。
一括で払えない場合は、月々10万円を分割で支払う、又は、1年後に支払うなど、支払い期限を猶予することも可能です。一般的に代償は、「現金」が多いですが、相続人間で合意すれば、現金以外の物や権利
でもかまいません。なお、遺産分割協議書で、代償分割の内容を必ず明記することが必要です。そうでないと、相続人間の単純な贈与として「贈与税」がかかります。
ただ、長男が自分の預貯金などで兄弟姉妹に代償分割できればよいのですが、それほど持っていないのが現状です。
「兄弟姉妹は平等」という意識が強くなって、激しい攻防が繰り広げられ、まさに
「相続は争族」になります。このため、親は、自分の不動産を誰に承継させるか、生前に「遺言書」を作成することが肝要です。