婚外子の相続について
Q.父親が亡くなり、長男である私と妹が相続をすることになりました。ところが、父親には、母とは別に女性がいて、その女性との間に男の子Aさんがいます。
父親が亡くなったことを聞きつけたAさんは、父親の相続財産については自分も私達と同等の相続分があると言っています。本当にそうなのでしょうか。
A.
従来、我が国では法律婚が尊重され、法律婚でなく生まれてきた子どもは「庶子」「私生子」「婚外子」などと差別的な言葉が用いられてきました。そして、相続においても、法律婚で生まれた子どもを「嫡出子」、
そうでない子どもを「嫡出でない子」とし、
その相続分も嫡出子の半分と規定されていました(民法900条4号但書)。しかし、この規定に対しては、子は親を選べないのに生まれ方で差別されるのはおかしい、
法律的な権利や義務については等しく取り扱う「法の下の平等(憲法14条)」に反するという批判が従来からありました。
平成25年9月5日の最高裁大法廷は、
非嫡出子に対する相続分の差別的な取り扱いは、憲法14条に「法の下の平等に反する規定である」として民法の規定は違憲であるとの判断を示しました。
民法における象徴的な婚外子差別規定がなくなり、子どもの平等が明示された歴史的「違憲」判断です。この判断を受けて、平成25年12月5日に民法が改正され、半分にするとの「但書き」の部分は削除されました。
従って、Aさんの主張は、正しい主張です。しかし、改正後の規定は、
平成25年9月5日以後に開始した相続に適用されることで、その結果、9月4日以前に開始した相続には、従前どおり、半分とする規定が適用されます。
ただ、大法廷の判断は、平成13年7月当時の相続事案であったことから、その時点からの相続についても、平等になるのではないかという問題があります。しかし、すでに従前の民法の規定で合意などがなされて遺産分割などが確定している相続については、
これを蒸し返すことは法的安定性を害し、妥当ではありません。上記最高裁もそのような判断をしています。