あすなろ法律事務所


Q1.地震による液状化現象で自宅が傾いてしまいました。この場合でも地震保険の対象となりますか。
A1.
 地震保険の保険事故は、地震若しくは噴火又はこれらによる津波を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没又は流失です。液状化現象による家の傾きは、地震を間接とする建物の損壊なので、地震保険の対象となります。

 
Q2.地震によって、自宅のブロック塀や垣根にひびが入りました。しかし、いつの地震によって発生したか分かりません。この場合、地震保険の対象となりますか。
A2.
 地震保険の保険事故の特定は保険を請求する人が主張し立証する必要があります。いつの地震によって発生したか分からない場合は、地震保険の補償の対象とならない場合があります。
 なお、ブロック塀や垣根が地震保険の対象に含まれる場合であっても、地震保険の損害の認定は建物の主要構造部の損害割合によって決められるので、ブロック塀や垣根のみの損害の場合には保険金は支払われません。しかし、ブロック塀や垣根にひびが生じている場合には、建物にも損害が生じている可能性が高いので建物についての損害認定を行ってもらう必要があります。
 
Q3.地震で避難中、自宅に泥棒が入り金品を盗まれた場合、火災保険又は地震保険で支払われますか。
A3.
 今回の能登半島地震でも、空き家に泥棒が入ったようですが、被害に遭って困っている人にとっては、実に腹立たしい犯罪であり、速やかに検挙して厳重に処罰すべきです。ところで、地震による空き家への火事場泥棒は、「地震→空き家→火事場泥棒」という意味では、条件的因果関係があるように見えます。しかし、相当因果関係があるかどうかになると疑問です。阪神・淡路大震災後に、ある商店から商品が多数盗まれるという盗難事件が発生しました。そこで、店の店主が盗難を保険事故とする火災保険に基づいて支払いを請求したところ、保険会社が支払いを拒否したので裁判になりました。裁判所は「一般に、盗難保険契約においては、地震免責条項が設けられ、保険会社は、地震の際の盗難による損害については、これをてん補する責めを負わないとされている。なぜなら、大地震が発生すると、社会秩序の混乱により盗難が発生し、その損害額が膨大なものになると予想され、これを保険会社においててん補するとなると、保険料が高額となり、かえって保険契約者の意思に反するとともに、保険制度もなりたたなくなる。」と判示して、その支払い請求を認めませんでした。
 また、地震保険でも、そもそも、地震直後の金品の盗難あるいは紛失は、免責とされています。そこで、普段から大切な金品は、身近に置いて地震が発生した場合、それをすぐに持ち出して避難する必要があります。しかし、避難した後、大事な金品を持ち出そうと自宅に戻った直後、余震で家が倒壊してその下敷きとなり亡くなられたケースもあるので、命が何よりも大事ではないかと思います。