あすなろ法律事務所
救済新法について(その2)

Q.旧統一教会の問題を受けて、被害者救済新法が令和5年1月5日から施行されたという報道がなされていますが、どのような法律なのですか。
A.
 前回、法が禁止している勧誘行為等を説明しましたが、悪質な寄付勧誘を未然に防止するために、勧誘する側の団体等に対し「配慮義務」という義務を課しました。どのような「配慮義務」かというと、
 @寄附の勧誘が、相手の自由な意思を抑圧し、適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないように配慮すること、
 A寄付により、個人またはその配偶者・親族の生活の維持を困難にすることがないように配慮すること、
 B勧誘を行う団体等を特定する事項を明らかにし、寄附された財産の使途について誤解されないよう明確にするよう配慮することです。
 特に、Aの配慮は、多額な寄附が家族全体にも大きな影響を及ぼし、悲惨な状況を生み出すことから特に明文化したものです。また、配慮の程度も当初は「配慮しなければならない」と規定されていましたが、その後「十分に配慮しなければならない」と改められました。このため、寄附を勧誘する側は、十分にわかりやすく、丁寧かつ礼節をもって勧誘にあたる必要があります。そして、「配慮義務」に反した場合、国が配慮義務を誠実に行うようにと当該団体等に「勧告」を発し、それでも従わなかった場合、勧告に沿う行動を取るよう「命令」を発します。そして、「命令」にも従わなかった場合、「命令違反」ということで1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金刑という刑事罰が科せられます。加えて、配慮義務を怠った団体名等も「公表」されます。そうなると当該団体等の社会的イメージが悪くなり、事実上活動ができなくなります。また、勧告等がなされた場合、「配慮義務」に反する不当な寄附行為があったとして、献金の返還を求めることも可能になり、また、団体等に対し損害賠償を求める訴訟を提起する場合でも「勧告等」の事実が裁判上、有利にはたらくと解されています。
 もっとも、マインドコントロール下で自ら進んでするような寄附行為の場合、この新法で対応できるは疑問でありますが、マインドコントロールの状態を脱し冷静になった時点において、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたと主張して、寄附行為の返還を求めることは可能であると考えられます。