あすなろ法律事務所
救済新法について(その1)

Q.旧統一教会の問題を受けて、被害者救済新法が令和5年1月5日から施行されたという報道がなされていますが、どのような法律なのですか。
A.
 新法の正式名称は「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」で、宗教団体に限らず、個人から法人・団体(社団もしくは財団で代表者・管理者を置いてあるもの)への寄附行為全般が対象となります。不当な寄附の勧誘を禁止するとともに、当該勧誘を行う法人等に対する行政上の措置等を定めることで、法人等からの寄附の勧誘を受ける者の保護を図ることを目的としています。なお、寄附の勧誘が個人であっても法人等の行為と評価される場合には、規制の対象となります。
 法が禁止している勧誘行為は、以下の6つの行為です。
 @ 家や会社に居座って勧誘を続ける行為(不退去行為)。
 A その場から帰らせないで勧誘を続ける行為(退去妨害行為)。
 B 霊感など実証困難な事柄を告知して不安をあおる行為(悪霊を取り除くためには寄附しかない等)。不安をあおるだけでなく、不安に乗じる手口も規制の対象です。
 C 恋愛感情に乗じて関係破綻を告知する行為(寄附をしなければ別れるしかない等)。
 D 勧誘を告げず退去困難な場所へ同行させる行為(ビルの一室に閉じ込める等)
 E 威迫する言動を交えて、相談の連絡を妨害する(親や弁護士に相談するなら、ますます悪霊が取り付いて地獄に落ちる等の言動)。
 上記6つの勧誘行為は、人を困惑させる行為です。つまり「困り戸惑い、どうして良いか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況」にさせます。こうした状況で行われた寄附の意思表示については、取消しが認められ、その結果、寄附した金品等を返してもらえます。ただし、1月5日以後の意思表示に限って取消しが認められ、それ以前に溯っての意思表示は取消すことはできません。勧誘行為の時期が施行日前で、意思表示が施行後であれば取消すことは可能です。なお、上記D、Eの行為については、令和5年6月1日から施行となっています。
 その他、過度の寄附を防ぐために借金をさせたり、財産(住宅、敷地だけでなく、田畑や工場といった事業用資産も含む)を売却させるなどして資金を調達する行為を禁じる規定も、本年中に施行されます。
 取消し権は原則本人しか行使できず、自ら寄附先に主張する必要があります(もっとも、過度な寄附によって家族が困窮する問題も生じたので、配偶者や子どもが本人に代わって取消し権を行使し、養育費等の範囲で寄附を取り戻せるようにもなっています。)。相手がこれに応じなければ裁判となります。このため、被害に関する記録や証拠を残しておくことが大事で、通帳の出入金記録、メールや通信アプリのやり取り、勧誘時の録音、日記、メモ紙などは保存しておいてください。