あすなろ法律事務所
債権回収方法について

Q.知人に100万円を貸したのですが、催促しても返してくれません。どうしたらよいでしょうか。
A.
 話し合いで解決すればよいのですが、話し合いで解決しない場合、裁判所を利用して強制的に債権を回収することになります。その方法として、まず、@「民事調停(みんじちょうてい)」があります。調停員という第三者が入ってもらえれば話し合いで解決できそうな場合や、裁判を起こしても証拠が揃っておらず、必ずしも勝てるとは限らない場合などは、相手の所在地の簡易裁判所に民事調停の申立てをします。この調停で解決できれば、訴訟と比較して費用もかかりません。ただし、話し合いで解決する以上、ある程度の譲歩をする必要があり、全額返して欲しい場合は、あまり適しません。また、相手を調停期日に強制的に出席させることはできないので、相手が全面的に争う姿勢を見せた場合は、調停の申立てをしても意味がありません。
 次は、A「支払督促(しはらいとくそく)」という方法で、証拠も揃っている場合は、相手の所在地(住所地)の簡易裁判所の裁判所書記官に対し、支払を求める方法です。支払督促では、申立人の申立て書類に基づいて裁判所書記官が支払督促状を相手に送達するので、債権者が法廷に行く必要はありません。これに対し、相手が異議の申立て(請求を争うこと)をすれば、通常の民事訴訟に移行しますが、異議がなければ、仮執行宣言(かりしっこうせんげん:裁判が確定する前に仮に執行ができる効力を与えること。本来は、裁判は確定した時、強制執行をすることができる効力が発生します。しかし、相手方が、勝ち目がないのに控訴などして、裁判の引き延ばしを図ると、勝訴した者が不利益を被ります。そこで、仮に強制執行することができるようにするものです。)の申立てをして裁判所に「仮執行宣言」をしてもらいます。「仮執行宣言付支払督促」は債務名義(さいむめいぎ:強制執行によって実現される請求権の存在及び範囲を表示したもので、強制執行の基礎となる公の文書のことをいいます。)になりますから、これで強制執行手続きをとることができます。
 最後は、通常の民事訴訟です。請求額が140万円以下のときは、原則、相手方の所在地の簡易裁判所に訴訟を提起します。140万円を超える場合は、相手の所在地の地方裁判所に訴訟を提起します。
 金銭が60万円以下の場合、「少額訴訟」という制度があり、相手方の所在地の簡易裁判所に、訴訟を起こすことができます。原則、1回の審理で証拠や証人を調べ、審理が終わり次第、直ちに判決が為されるので、極めて迅速に手続きが終了します。ただ、債権額が少ないことから、強制執行の手続きまで取ると、費用倒れという危険性もあります。
 どの方法が一番適切かは、請求金額、証拠の有無、裁判費用、相手方との交際状況の濃淡等を考えて検討してみてください。