あすなろ法律事務所
ニシキヘビの飼育について

Q.令和3年5月6日、神奈川県内のアパートで飼育していた体長約3・5mのアミメニシキヘビが逃げ出し、大騒ぎになりましたが、このような危険なヘビを飼育してもよいのでしょうか。もし、人に危害を加えた場合、買主はどのような処分を受けるのでしょうか。
A.
 アミメニシキヘビは、ヘビの中でも巨大で、毒は持っていないものの、締め付ける力が強く、2012年4月、茨城県内でペットとして飼っていた男性が締め付けられ咬まれて死亡した事故が発生しています。このように、人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれのある動物について「特定動物」と指定し、原則その飼育、保管を禁止しています(「動物の愛護及び管理に関する法律」25条の2)これに反して飼育した場合、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。何が「特定動物」かについては、政令で定められており、哺乳類では、ゴリラ、チンパンジー、爬虫類では、かみつき亀、毒トカゲ等が指定されています。問題のアミメニシキヘビも、コブラ等と同じく「特定動物」に指定されています。
 但し、以前は、都道府県知事の事前許可があれば飼育できました。許可を受けるには、飼育の構造・規模・保管の方法などを記載した書面など提出する必要があり、そして、許可後に飼育施設などの変更をする場合には、予め別途許可が必要で、許可を受けずに飼育施設を変更した場合は、上記と同様の罰則規定があります。このように厳しい制限をもうけたのは、人の生命、身体又は財産、又は周辺の生活環境へ与える影響が重大であることから、飼い主により一層の責任と適正な取り扱いを求めているということです。アミメニシキヘビを飼育していた男性も事前の許可(2017年)を得て飼育していました。しかし、行政から許可を得た飼育施設は、ガラス製のケージでしたが、その後、許可を得ずに木製ケースに蛇を入れており、変更の許可を受けていませんでした。したがって、無許可で飼育施設を変更したということで罰則を受ける可能性があります。
 なお、2020年6月の法改正で、特定動物を愛玩目的すなわちペットとして飼育することは禁止されました。ただし、法改正前に飼育している場合は、適用外なので、その動物を死ぬまで面倒見ることになります。許可が出た場合の飼い主の義務ですが、@動物の飼い主は、動物の習性等に応じて適正に飼育し、動物の健康及び安全を保持するよう努めるとともに、動物が人の生命・身体・財産などに危害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせたり、人に迷惑を及ぼすことにないように努めなければならない、A動物の逸走を防止するための措置を講じなければならない等を定めています。
 人に危害を加えた場合の責任ですが 民法は、動物の占有者・保管者の責任を規定し、動物が咬みついたりなどして人に危害を加えた場合は、賠償責任を負うと規定しています。
 また、刑法上も重過失致死傷罪(刑法211条)5年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金。過失傷害(30万円以下の罰金)、過失致死(50万円以下の罰金)に処せられます。なお、報道によれば、5月22日、発見され捕獲されたようです。