あすなろ法律事務所
学校でのいじめ対策について

Q.
 学校でいじめにあった生徒が自殺したという痛ましいニュースなどが後を絶ちませんが、法的にどのような対策が講じられているのでしょうか。
A.
 文部科学省は、毎年、「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」を行い、いじめ認知件数を報告していますが、平成27年で約22万件と報告されています。これは、あくまで教師が認知した件数であり、実際は、もっと多いと思われます。いじめの中で最も多いのは「仲間はずれ、無視・陰口」であり、中学男子で32.2%、中学女子で39.6%被害経験があるとされています。
 いじめは、いじめを受けた児童などの教育を受ける権利を侵害し、その心身の健全な発達及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命または身体に重大な危険を生じさせる恐れがあることから、国は平成25年に「いじめ防止対策推進法」(以下、「法」とします。)という法律を制定し、いじめの防止、いじめの早期発見などの対策に取り組んでいます。
 法2条は、いじめとは、「当該児童と一定の人的関係にある他の児童が行う心理的又は物理的な影響を与える行為であって、当該行為の対象となった児童が心身の苦痛を感じているものをいう」と定義しています。「仲間はずれ、無視・陰口」は心理的いじめであり、殴ったり蹴ったりするのは「物理的いじめ」になります。
 法4条は、「児童等はいじめを行ってはならない。」と規定し、学校におけるいじめ防止の対策のための組織を設置し、未然防止のための環境づくり、早期発見といじめを受けている児童がいると思われるときは適切かつ迅速に対処する責務を有すると規定しています(法7条)。特に、いじめにより重大な被害(自殺や自殺未遂等)が生じた疑いがあると認めるとき、学校は、速やかに、地方公共団体の長及び教育委員会に報告する義務があります(法29条等)。この対応に遅れると、法律違反であるばかりではなく、地方公共団体などの学校に対する適切な指導・助言などの対応にも遅れを生じさせ、事態をますます悪化させることになります。
 さらに、法は、いじめをした児童に対し、教育上必要があると認める時は、校長及び教員は懲戒を加えることができ(法25条:但し、体罰は禁止です)、保護者に対し、いじめをした児童の出席停止を命ずるなど、いじめを受けた児童などが安心して教育を受けられるようにするための必要な措置を速やかに講じることもできると規定しています(法26条)。
 いずれにしても、いじめ問題については、関係機関は、「速やか」に対処することが肝要です。