仮差押えとは
Q.
例の森友学園問題で、大阪の豊中市の旧国有地に小学校として開校しようとしていた建物を建設していた業者が、施主が工事代金を支払ってくれなかったと言って、施主の自宅の土地や建物の「仮差押え」を裁判所に申立て、それが認められましたが、「仮差押え」というのはどういった処分ですか。
A.
仮差押えとは、裁判所の判決が出る前に、金銭的な請求権を保全するために、債務者の財産の処分を禁止する裁判所の決定のことをいいます。工事代金を請求しても応じない場合、裁判ということになりますが、提訴しても開始まで1ヶ月以上かかります。また、始まっても相手方が争えば、判決を得て、強制執行をしても良いというお墨付き(債務名義)を取得するためには、数ヶ月あるいは1年以上はかかります。この間、相手方が財産隠しをしたり、他の債権者に支払いをしたのでは、裁判に勝っても意味がありません。そこで、
訴訟に勝った場合の権利の実現を保全するために、あらかじめ相手の財産を仮に差押えておくことができるようにします。それが「仮差押え」です。
仮差押えの効力ですが、設問の場合、不動産の仮差押えなので、相手方は、不動産を売るなどの処分ができません。そして、仮差押えされたことが、不動産登記簿にも登記されます。あくまでも仮の保全手続ですから、相手方が、家に住めなくなりすぐに家を明け渡ししなければならないということはありません(しかし、本裁判で、負ければ強制執行できますから、出て行かざるを得ません。)。仮差押えは、相手方には、非常なプレッシャーとなり、対外的にもイメージが悪化します。そのため、仮差押えを解いてもらうために、支払いに応じるということになります。
金銭債権の仮差押えのようあるケースとして、債務者が第三者に売掛金を有している場合は、その売掛金を仮差押えする場合があります。つまり、当面の間、第三者が債務者に売掛金を支払うことを禁止する命令を裁判所から出してもらえれば、売掛金の支払いが止まります。そのほか、給与の差押え(但し、4分の1)や預貯金の仮差押えなどがあります。
あくまでも仮に財産を差押えておく制度ですから、本裁判で負ける可能性もあります。その場合、差押えられた方は、損害を被ることもあるので、そういった場合に備えて、あらかじめ保証金を供託する必要があります。保証金は、債権額の1割から3割程度が相場です。保証金が高いと、それを納付できないという理由で仮差押えを断念する場合もあります。