あすなろ法律事務所
国立公園などで天然物を傷つけたら

Q.石川県白山市の白山国立公園内にある県指定天然記念物の巨石「白峰百万貫」に、ロッククライミング用と見られる金具が打ち込まれていました。また、岐阜県御嵩町の鬼岩公園にある国の天然記念物岩に、金具が打ち込まれていたなどの事件が報道されていますが、このような行為をした場合は、具体的にどのような罪になるのですか。

A.
 まず、国立公園・国定公園にあるものについて、どのような規制があるかですが、自然公園法は、次のような行為を禁止しています。
 @ 工作物の新築、改築、増築(従来あるも工作物の色彩を変更する場合も含む)
 A 木や竹などを伐採や損傷する
 B 鉱物を掘削、土石を採取する
 C 高山植物を採取したり、損傷する
 D 動物の捕獲
E 当該地域に生育するものではない動植物を持ち込む
 どうしても行う必要がある場合は、文化庁に許可または事前の届出が必要です(私有地でも、許可又は届出が必要)。従って、国立公園内にある「白峰百万貫」の岩にロッククライミング用の金具を打ち込むような行為は、「掘削」すなわち、岩石を掘ったり穴を開けたりする行為であり、自然公園法83条の罰則規定によって、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
 加えて、それが天然記念物と指定されている場合、天然記念物とは、動物、植物、地質、鉱物などの自然に関する記念物のことをいい、「文化財保護法」や「各地方自治体の文化財保護条例」に基づき大切に保存されます。
 従って、これらの文化財である記念物を毀損した場合は、5年以下の懲役もしくは禁固又は30万円以下の罰金と更に重く処罰されています。また、そこが、都道府県指定の自然公園であった場合は、条例違反ということで、2年以下の懲役あるいは罰金などの処罰を受けることもあります。
 景勝地などに観光客として訪れた場合、景勝地は、国立公園や国定公園、あるいは都道府県の自然公園であることが多いので、景勝地内で動物の採取はもとより、草木や岩石などを持ち出さない、枝を折ったり、草花を踏み荒らしたり、岩石を傷つけたり、落書き(岩や木に名前を書き込むなどもってのほか)や何かを打ち付けたりしない、たき火やゴミを捨てたりしないということが大切です。そして、自然環境を大切にするという心構えが必要です。