あすなろ法律事務所
「捨て印」について

Q.業者からお金を借りる際に、契約書を交わしましたが、その際、捨て印を求められて押しましたが、「捨て印」とはどういうものですか。大丈夫ですか。

A.
 契約書類を作成し、契約を交わした後、誤字や脱字、微細な修正箇所が見つかった場合、訂正する箇所には訂正印を押さなくてはなりません。この場合、欄外に押印し、「ある程度の不備は本人に連絡しなくても修正することを許可します」という意味を持つのが「捨て印」です。捨て印が押してあることで、当人がわざわざ出向かなくても良いという便利さはあります。一般の契約書、遺産分割協議書、委任状などによく利用され、表題の上あたりに押されるのが通例です。捨て印は、本来、微細な修正箇所や或る程度の修正の便宜のために利用されますが、法律上どこまで修正が可能かについて制約がありません。
 本人の確認無しにいくらでも修正や加筆ができるということは、ある面、危険です。例えば、金額を一桁増やされたり減らされたり、また、不当な利子を付けられたりする場合もあります。捨て印を押すことは改ざんされて損害を被ることですから、書類をよく読み、よく考えて、かつ相手が信頼できる人物かどうかなど見極めて押すべきです。
 特に、委任状の捨て印は注意が必要です。なぜなら、委任の範囲を超えた内容を書き込み、捨て印で文字を追加される場合があるからです。
 業者から求められても、捨て印を押す義務はありません。押していないからといって契約が無効になることはありません。どうしても、相手が捨て印を要求した場合、@訂正箇所が見つかったら、出向いて確認する。A記入した書類のコピーや写真をとっておく。Bあくまでも、捨て印であることを明記し、加除修正する場合は連絡をすることの覚書を取っておくことなどが必要です。
 相手が捨て印を悪用して、金額を改ざんしたりした場合は、私文書偽造罪で3月以上5年以下の懲役、あるいは私文書変造罪で1年以下の懲役又は10万円以下の罰金となります。さらに、契約書などの書面の無効、取り消しなどを主張することができます。