あすなろ法律事務所
18歳、19歳の年齢の法的扱いについて

Q.選挙権の年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法の改正が行われる反面、少年法では、少年を20歳未満としています。 18歳、19歳の年齢について法的扱いはどうなっているのですか。また、問題点はないのですか。

A.
 現在、国会で与野党は、選挙権を持つ年齢を18歳以上にする公職選挙法改正案を提出する予定です。成立すれば、来年夏の参議院選から実現します(新たに約240万万人の 有権者が誕生)。既に、昨年6月施行の憲法改正手続に関する法律(国民投票法)は、満18歳以上の者に、国民投票の投票権を有するとされています。これは、18歳以上は一人前の大人として国政に参加する権利を与えるべきという考えです。
 他方、名古屋で19歳の女子大学生が、人を殺してみたかったという動機で女性を殺害した事件や、川崎市内で中学1年生が殺害され、18歳の少年らが逮捕される事件など、 18、19歳の年齢の凶悪犯罪が起きています。これらの少年の実名や顔写真が、新聞などで報道されないのは、少年法61条が「氏名、年齢、職業、住居、容ぼうなどによりその者が当該事件の本人であることを推知することがでいるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない」と規定しているからです。これは、少年の名誉・プライバシー保護、社会的偏見の発生防止、健全育成および更生を図ろうとするもの。しかし、違反しても罰則規定はなく、あくまでもメディア倫理の問題です。某週刊誌は、事件の残虐性と重大性に鑑み、19歳という加害者の年齢なども総合的に勘案した上で、女子大生の名前と顔写真を報道しています。
 18、19歳という年齢をどのように考えるかですが、民法は、親の同意なしで結婚ができるか成人年齢を依然20歳とし、20歳未満に引き下げていません。また、20歳未満の法律行為は、原則、親の同意を必要とし、同意がなければ取り消し原因ともなります。その他、「未成年者飲酒禁止法」や「未成年者喫煙法」では、20歳未満の者の飲酒や喫煙を禁止しています。  国政に参加する場面では、大人と同等の権利を与えるとしながら、民法や少年法やその他の法律では子供として扱うのはバランスを欠くようにも思われます。私自身、検察官時代、少年犯罪を数多く扱い、中には凶悪かつ重大な犯罪を行いながら「俺たちは少年法で守られている」と公言し、反省のない少年もいました。
 18歳以上の者に選挙権を与えるならば、それは、責任ある判断ができる年齢であると考えた証。権利を与える反面、義務感や責任感も相応に負うべきだえると考える事も重要です。
 したがって、名古屋や川崎市の殺人事件は、あまりにも残虐・非道であり、動機においても酌量の余地がないことを考えれば、もはや、少年の名誉・プライバシーを法で守る必要があるかは疑問であり、この点は、広く議論されるべきでないでしょうか。