同性婚合憲の判断について
Q.同性婚を認めないのは「法の下の平等」を保障した憲法14条に違反するとして「違憲」とした判決が、昨年3月札幌地裁で出されましたが、本年6月に大阪地裁は「合憲」と判断しました。これをどのように考えれば良いでしょうか。
A.
憲法24条は
「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し」と規定しており、婚姻の自由を保障した同条は「同性婚を想定していない」というのが、両地裁共一致しています。国は訴訟で、婚姻制度が念頭に置く保護の対象は「子を産み、育てることができる男女」と主張していますが、他方、同性愛者だからといって子育てができないわけではなく、里親として養子を迎えて育てている同性カップルもいるとの反論もあります。
問題は、性的指向という自らの意思で選択、変更できない事柄をもって、同性愛者の保護に欠け、
同姓カップルが婚姻によって生ずる法的効果の一部ですら受けられないのという不利益を受けることの是非ですが、札幌地裁は、その不利益は、合理的根拠に欠くとして、憲法14条1項の規定する「法の下の平等」に反し違憲としました。これに対し、大阪地裁は、同姓カップルの保護について「社会の中で公に認知されて、安心して安定した共同生活を営む利益は満たされていない」と問題視しつつも、
「自治体のパートナーシップ制度(婚姻届が受理されない性的少数者のカップルに代替となる公的証明書の発行し、さまざまなサービスや社会的配慮を受けやすくする制度。公営住宅への入居が認められたり、病院で家族として扱ってもらえたりでき、現在、200を超える自治体に広がっている)
などで、同性・異性間カップルが得る利益の差が緩和されつつある」と捉え、同性カップルの保護については
「国の伝統や国民感情を踏まえ、民主的過程において決められるべきだ」とし、議論が尽くされていない現状では違憲とはいえないと判示しています。
もっとも、大阪地裁の判断も、今後の社会状況の変化によっては、将来的に国が何らの立法も講じないで放置すれば、違憲になり得るとも判示しています。
したがって、現在、同性カップルには、
配偶者控除、医療費控除の合算、相続税の優遇、養子の共同親権などは認められていませんが、この状態をいつまでも放置すれば、立法の怠慢として違憲と判断される可能性があると思われます。
先進7か国(G7)では、日本を除くすべての国が同性婚や同性カップルの権利を国家として容認しています。他方、イランやサウジアラビアなどの中東では、同性婚は犯罪として位置付けられ、最高刑として死刑が定められています。この問題は、いずれ、最高裁の判断が出ると思われますが、国民的な課題として注目すべき問題であると思います。