あすなろ法律事務所
同性婚について

Q.同性婚を認めていない民法の規定が憲法に違反するかどうかの裁判で、最近、裁判所がそれは違憲だという判決を出したことが大きく報道されましたが、この判決が与える影響はどのようなものでしょうか。


A.
 令和3年3月17日札幌地裁は、同性婚を認めていない民法などの規定は、「不合理な差別であって憲法14条の規定する法の下の平等に反する。」との初の違憲判断を示しました。婚姻について、民法731条は「男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻することができない」と規定しています(民法改正で成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い、令和4年4月から、男女問わず「婚姻は18歳にならなければ、することができない。」となります。)。つまり、民法の規定は、男女間の結婚をもって、婚姻と考えています。しかし、性的少数者の権利保護の意識が高まるなかで、同性カップルについても結婚を認めるべきであるという裁判が各地で提起され、今回、裁判所は「性的指向は自らの意思にかかわらず決定される個人の性質で、性別や人種と同様だ」と判示して、違憲判断をしたのです。その前提となる憲法14条は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と定めています。人種や性別など、自分の意思ではどうにもならない、生まれながらの個人の資質でもって法的に差別してはならない、つまり「不合理な差別」の禁止を憲法は定めています。同性カップルについては、今まで「同性愛は精神的疾患」であるという偏見が持たれていて法的保護の対象外とされてきました。今回の判決は、そうした偏見を明確に否定し、同性婚を認めない民法や戸籍法の規定は著しく不合理な差別だとした画期的な判断といえます。もっとも、一審レベルの判断なので、すぐに法改正につながるわけではありませんが、海外では、約30か国の国や地域が同性婚を認めていることから、同性婚の論議に弾みがつくと思われます。
 なお、自治体によっては、同性カップルの権利に配慮した「パートナーシップ制度」が既に導入されており、公営住宅への入居が認められたり、病院で家族として扱ってもらえたりしています。また、最近では、企業も本人の申請に応じて、法律婚と同等の福利厚生を提供する事例や生命保険金の受取人に指定するのを認めるなどしています。とはいっても、法的拘束力はないので、配偶者控除、医療費控除の合算、相続税の優遇、養子の共同親権などは認められていません。しかし、性的マイノリティ(少数者)にも基本的人権を尊重すべきという時代の流れあることから、やがて、日本でも法的にも認める時代が訪れるものと思います(野党は、2年前に同性婚を認める法律案を提出していますが、審議はされていません。)。