死後離婚について
Q.亡くなった配偶者の親や兄弟姉妹との関係を解消する「姻族関係終了届」を出して、「死後離婚」をする人が急増しているそうですが、「姻族関係終了届」とは、どんな手続ですか。
A.
夫の死後、こじれた嫁と舅あるいは姑関係の継続や、義理の親の介護を担う不安などから、姻族関係の終了届を出す件数が急増しています。平成17年度は1,772件だった姻族関係終了届の提出数は、27年度には2,783件に増えています(法務省の戸籍統計)。その背景には、「夫が亡くなったことを自分のせいにされた」「介護に巻き込まれたくない」など、30代〜50代の女性が多く、嫁姑の問題に起因するものがほとんどです。
法律では、結婚した場合「3親等内の姻族を親族」と定めています(民法725号3号)。例えば、夫と結婚した妻は、夫の両親、夫の兄弟姉妹、甥や姪、さらに夫の祖父母がいた場合、祖父母までが親族となります。このように姻族関係が生じた場合、法律は「直系血族及び同居の親族は、お互いに扶け合わなければならない義務」(730条)あるいは、家庭裁判所の判断で「扶養義務を負わせれる」場合があります(877条2項)。しかし、同居していた舅や姑にさんざん虐められた妻が「夫の死亡後も、舅や姑の面倒を見るのは嫌だ、夫の親族と縁を切りたい」と考える人もいます。離婚すれば、自動的に姻族関係は消滅しますが、配偶者が亡くなった場合、姻族関係は継続されます。従って、妻が夫死亡後でも、舅や姑の面倒を見る義務が生じたり、再婚した場合も、死亡した夫の側との姻族関係も終了しないので、複数の姻族関係が生じる場合もあります。つまり、前配偶者の両親の面倒を再婚後も負うという義務が生じる場合もあります。このような場合、「姻族関係終了届」を提出することで、姻族関係を終了させることができます(民法728条2項)。家庭裁判所への申立も不要です。本人の意思で自由に決めることができ、相手方の血族の了解も不要です。
提出方法は、本籍地か住所地の市区町村に「姻族関係終了届」を提出するだけで手続は終了します。いつでも提出でき、期限はなく、届出日から姻族関係は終了します。結婚前の
戸籍や姓に戻したい場合、「復氏届」を提出することになります。姻族関係が終了することで、扶養義務や扶け合いの法的義務はなくなります。なお、夫の遺産を相続した場合でも、遺産を返却する必要はなく、遺産を受け取ることができます。また、妻が「姻族関係終了届」を出しても、子どもと夫側の親族関係は変わらないので、夫の死後、夫の父母が亡くなった場合、子は、代襲相続人として、祖父母の遺産の相続権はあります。