あすなろ法律事務所
赤切符・青切符等について(その2)

Q.先日、駐車違反ということで警察官からいわゆる「青切符」の交付を受けました。交通違反をすると、赤切符・青切符を切られるということですが、どのような意味を持つのですか。また、警視庁は10月末から自転車の交通違反に対しても「赤切符」を交付するということが新聞に出ていましたが、どういうことですか。

A.
 前回に引き続き、自転車にも赤切符が切られる件について説明します。自転車も道路交通法の規制の対象となる「車両」(種類は軽車両)ですから、道路交通法違反を起こせば、罰則の規定がありました。例えば、酒酔いで自転車を運転した場合、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。
 しかし、警察は、これまで、あまり赤切符を切ってきませんでした。これは、自転車は、人に対する生命・身体に対する危険性が自動車ほど感じられないということで、仮に人を死傷させた場合、刑法の重過失致死傷罪(5年以下の懲役若しくは禁錮又100万円以下の罰金)又は過失致死傷罪で対処してきました。しかし、ここ最近、自転車による事故が多発し、死亡・重傷事故も増えてきました。これは、コロナ禍における自転車通学・通勤の増加、飲食店の自転車によるデリバリーサービスなどの拡大で、自転車事故や違反が以前より多くなったという背景があります。
 そこで警視庁は、悪質な自転車に対する取り締まりを強化しようということになり、特に危険な違反行為として掲げている14項目の行為のうち、@信号無視、A一時不停止、B右側通行、C徐行せず歩道を走るについては、重点的かつ積極的に赤切符を切って刑事処分の対象としようとしたものです。
 因みに、14項目とは、@信号無視、A通行禁止違反(車両止めや自転車通行止め走行)、B歩道での徐行違反、C通行区分違反(道路右側の路側帯の通行、自転車は原則左側通行)、D路側帯での歩行者妨害、E遮断機の下りた踏切への侵入、F一時停止違反、G歩道での歩行者妨害、Hブレーキのない自転車の運転、I酒酔い運転、J携帯電話を使用しながら運転や「傘さし運転」などの安全運転義務違反、K交差点での優先道路通行車の妨害、L交差点で右折する場合の直進車を妨げること、M環状交差点の安全進行義務違反です。
 赤切符を切る狙いの目的は、取り締まり強化以外に、悪質な自転車運転者に平成27年6月1日から施行された「自転車運転者講習制度」を義務付け、自転車運転のマナーを向上させようとすることにもあります。この制度は、上記14項目の違反について、3年以内に2回以上、警察官から違反切符が交付された場合は、「自転車運転者講習制度」を義務付けました(講習は3時間、講習料は5700円です)。満14歳以上の人に受講義務が発生し、この講習を受けないと5万円以下の罰金に処せられます。つまり、赤切符を切って刑事処分の対象にする以外に、講習を義務付けマナーを習得させようというものです。
 なお、自転車には青切符はありません(通告制度の対象外)。違反切符は全て赤です。もっとも、違反が軽ければ、注意を促す「自転車指導警告カード」(黄色)が渡されます。この場合は、「自転車運転者講習制度」の対象ではありません。