あすなろ法律事務所
不正競争防止法違反について

Q.回転ずし大手「かっぱ寿司」の運営会社の社長が、競合大手の「はま寿司」の仕入れ情報が記録されたデータを持ち出したことで不正競争防止法違反の容疑で逮捕されましたが、「不正競争防止法違反」とはどのような法律なのですか。

A.
 営業の秘密の侵害や他社製品等の模倣等があった場合、被害を受けた企業に大きな損失が生じます。また、企業間で健全な競争が維持されていなければ、経済全体に悪影響を及ぼす恐れもあります。不正競争防止法はこのような問題に対応するための法律です。
 回転ずし業界では、競争が激しく、いかに原価率を下げて儲けを大きくするかです。マグロ、鯛、エビ、アワビ等の魚貝類は、原価率が5割以上と高く、野菜は原価率が1割程度です。こうしたことから、業界では、可能な限り原価率の低い仕入れ先を見つけて、交渉します。ですから、各会社は、仕入れ先や食材の原価を記載したデータは、「秘中の秘」で、見ることができるのは、限られた社員だけで、かつ、開示には「パスワード」を必要とします。そこで、容疑者は、はま寿司の経営企画部長からパスワードを教えてもらい、データを閲覧したのです。
 「営業秘密の秘密」に該当するためには、当該情報が以下の3つの性質を備えていく必要があります。
 @秘密の管理性(従業員等からみて、企業が秘密にしたい情報であることがわかる程度に管理されていること。本件のようにパスワードなどを必要とするなどの対応を企業が取っていること)、A有用性(事業活動の上で役に立つ情報であること)、B非公知性(一般的に入手できず、情報を管理している者以外が容易に入手できないこと)。通常、顧客名簿、顧客対応マニュアル、新規事業計画、製造ノウハウ、設計図などがあげられますが、はま寿司の仕入れ先情報も、これに該当し、ライバル会社のものを知ることができれば営業戦略の参考となり、仕入れ先との交渉を有利に進めることができます。
 その他の不正行為として@「周知表示混同惹起行為」(例えば、ルイ・ヴィトンの商標と似た商標のバックを売るなど)、A著名表示冒用行為、B限定データの不正取得などがあります。
 罰則ですが、「営業秘密の侵害」の罰則は特に重く、10年以下の懲役、もしくは2000万円以下の罰金、またはその両方です(その他の不正行為は、5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金)。そして、法人も処罰され(これを両罰規定といいます)、罰金は5億円以下となります。また、営業秘密を侵害して得た利益も没収されます。
 さらに、民事的措置として、差止請求、損害賠償請求、信用回復請求等の措置があります。
 近時、競合他社から転職した社員が営業秘密を持ち出すケースが多くなっています。