あすなろ法律事務所
酒による危険運転について

Q.千葉県八街市の市道で、下校中の小学生の列にトラックが突っ込み5人の児童が死傷したという事故が起きました。運転手は、当初「自動車運転処罰法違反(過失運転傷害)」の容疑で現行犯逮捕されましたが、その後、酒を飲んでいたことが判明し、「危険運転致死傷」の疑いで送検されたということです。どのような違いがあるのでしょうか。

 未来のある児童が、このような事故で亡くなるのは本当に痛ましいことです。通学路での悲惨な事故は繰り返し起きており、その度に、国も通学路の安全確保の再徹底を指示し、各市町村も通学路の点検や対策を実施しています。今回の場所は、幅約7mの直線道路で見通しもいい。逆にそれが、車の速度が出やすく事故を誘発する危険な通学路ということになったようです。
 ところで、車による人身事故については、「自動車運転致傷処罰法」(以下単に「処罰法」という。)という法律が適用されます。そして、一般的に運転手の不注意により、人を死傷させた場合は、処罰法の中の「過失運転致死傷罪」に該当し「7年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金刑」(5条)に処せられます。ところが、飲酒運転をして、人を死傷させた場合、事故の危険性が極めて高く、運転態様が極めて悪質であるにもかかわらず、過失運転致死傷罪と道路交通法違反(酒気帯び又は酒酔い)だけでは、あまりにも法定刑が軽すぎるという遺族側の批判があり、処罰法の中に「危険運転致死傷罪」という規定が設けられました。
 この規定は、「アルコールまたは薬物の影響で正常な運転が困難な状態に陥り、車の運転で人を死傷させた者の処罰を定めたもので、人を死亡させた場合は15年以下、負傷させた場合は12年以下の懲役に処する」(3条)というものであり、禁錮刑も罰金刑もなく、非常に重い刑罰が科せられます。
 問題は、基準値を上回るアルコール量ですが、基準値としての「酒気帯び運転」(法定刑は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)は、身体にアルコールを、呼気1リットルにつき0・15ミリグラムまたは血液1ミリリットルにつき0・3ミリグラム以上保有する状態であった場合です。それを上回るアルコール量というのは、「酒酔い運転」(5年以下の懲役又は100万円以下の罰金)であり、これは、身体に保有するアルコールの量以外に、警察官の質問に答えることができるかどうか、10秒間の直立ができるかどうか、10mの間をまっすぐ歩くことができるかどうかなどの外形状況から判断されます。
 今回の事故をとおして、酒を飲んで運転することは犯罪であり、その結果、人身事故を起こした場合、一生を台無しにする恐れもあるということを、再度、自覚すべきです。