110年振りの刑法改正で、性犯罪が厳罰化されたということが報道されていましたが、どのように改正されたのでしょうか。
Q.
平成29年6月16日、刑法の性犯罪規定は大幅に改正されて成立し、同年7月13日から施行されました。この性犯罪を巡る改正は、明治時代の制定以来、110年振りとなります。そのポイントですが、これまで被害者を女性に限っていた「強姦罪」、「準強姦罪」から、男性も被害者に含め、罪名も「強制性交等罪」、「準強制性交等罪」に変更されました。そして、法定刑を「3年以上の有期懲役」から「5年以上の有期懲役」に引き上げられました。したがって、有期の懲役の上限である20年まで処罰されるということになります。
男性も被害者になる点ですが、改正前は、男性に対する性的な嫌がらせは、「強制わいせつ罪」にしかならず、法定刑も懲役6月以上10年以下の罪でしたが、今回の改正で、強制性交罪として処罰され、罪も非常に重くなったのです。もっとも、「強制」ですから、暴行、脅迫行為が必要です(被害者が、13歳未満の場合は、暴行、脅迫がなくても成立します)。なお、特筆すべきことは、改正前は、被害者が他人に知られたくない事実も公表され、被害者にとって堪えがたい苦痛を与えるということで「親告罪」(被害者から、加害者に対し、厳重処罰を求めるという意思表示がなければ起訴されないことを意味します)としていました。しかし、被害者にとっては、逆に、告訴するか否かの選択を迫られたり、告訴したことにより加害者から報復を受けるのではないかとの不安を持つこともあり、かえって、被害者の精神的負担が大きいという配慮から、被害者の告訴が無くても処罰できる「非告訴罪」としたことです。その他、家庭内での性的虐待についても、問題となっていることから、親などの監護者が、18歳未満の子どもに対し、その影響力に乗じて性的な行為を行った場合、暴行、脅迫がなくても、処罰することができるとし、新たに、「監護者わいせつ罪」「監護者性交等罪」の規定を新設しました。家庭内での性犯罪は、子どもの心に生涯大きな傷を与えることから、この新設規定により、少しでも被害を防ぐ必要があります。性犯罪は、被害者の人格や尊厳を著しく侵害する悪質重大な犯罪であることはもとより、その心身に長年にわたり多大な苦痛を与え続ける犯罪であることを考えれば、厳正な対処が必要であり、その点で、今回に改正は意義があると思います。